百年経っても落ちない壁を眺めているうち、ふと目に入った不思議なもの・・・それが島根の風土を育み、日本近代建築の一翼を担った石州左官たちが、磨き上げた技と魂を吹き込んだ鏝絵だと気づくのにはそう時間はかかりませんでした。
「まちなみ探偵団」を結成してからこれまでに見つけた鏝絵は300点を超えました。庶民文化の結晶のひとつとも言える鏝絵の魅力と、その一つひとつにまつわる様々な出会いは、普段は見過ごしてしまいがちな身近な”たからもの”がわたしたちのまちにもあることを確信させてくれました。
十年余の歳月が流れる中で、メンバーによる新聞掲載、ホームページの開設、全国鏝絵サミットの開催と、多くの支援者と様々な機会に恵まれ、私たちの小さな想いは今や大きな輪となって全国各地に広がっています。
本書は、島根県の石東地域における鏝絵に関心をもち、地域住民や来訪者のみなさんに”わたしたちのたから”を伝えたと思っていただいた方のために、当団体が受託した国土交通省の地域資源活用構想策定等支援調査事業の一環として作成するものです。
今の時代を生きる私たちが貴重な地域資源の存在に気づき、先人たちが築いた「ものづくり」のすばらしさを語り継ぐための一助としてご活用いただけると幸いです。
2007年3月
まちなみ探偵団 代表 福間祐子
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